。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。








落ちる―――



そう実感したのはほんの一瞬。


だが永遠とも取れる時間のように思えた。


あたしの手が何かを求めるように宙を描く。






お   ち   る





目を開いてタイガを見ると、タイガは唇を指先で拭い、冷たい笑みを浮かべていた。





   オ    チ    ル







はじめて


いいや、ホントは何度もそう言う局面に立たされたが


本当の意味であたしは死ぬんだ、と実感した。





視界が暗転する直前




「追加伝言や。



気ぃつけぇ。




うちらが“フリーランス”を語ってるんは




風向き次第でどちらにでも“靡く(なびく)”から―――





あんたらがいかんのや?





人は簡単に裏切るもんやからね。




簡単に信用せぇへん方がええよ」






と、耳のすぐ傍で、



―――女



の囁き声が聞こえた。



誰……?



振り返る余裕などなかった。


ゆっくり考える暇もなく




とうとうあたしの視界は真っ黒な闇が幕を下ろした。


ただ真っ暗闇に落ちる瞬間、白い布が目に映った。


それは以前神社で襲われたとき、女が着ていた白色に思えたが




声はキリさんじゃない。



ぼやけて渦巻く視界の中、ゆらりと浮かび上がった“女”の姿は


白衣だろう……着た、ショートボブの……




「後ろの正面



だぁれ」




女は愉しそうに笑い、







今度こそ、あたしの視界が黒一色に染め上げれた。


その闇のような黒が支配する直前に思ったことは







「戒―――………」





愛するひとの名前だった。








.。・*・。..*・ To be continued ・*..。・*・。.





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