。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。

靴!?



□ 靴!? □


その後あたしたちは近くの喫茶店へと移動することにした。


千里は叔父貴を威嚇しているし、そんな千里をまるで阿修羅のごとく睨んでいる叔父貴。


ひたすらに困っているおばちゃんと、それ以上に困惑しているあたし。





どうあっても目立つ。


道行く人々の好奇にさらされ


「千里、龍崎さん…朔羅ちゃんも……とりあえず場所を変えない?」


とおばちゃんが苦笑いで提案。


そうして連れてこられたのが、路地裏に位置する小さな小さなカフェと言うよりちょっとレトロな感じのする喫茶店だった。


『月香珈琲』と書かれた文字に親しみが湧いたし、何より響きがきれいだ。


茶色い格子が縦横に走る窓には分厚いガラスがはまっていて、あたしたちが入ったその数分後、その窓ガラスに雨の粒が打ち付けられた。


叔父貴は無言でタバコを吹かせて、その斜向かいで千里はむっつりと横を向いている。


あたしはそんな不機嫌叔父貴と千里の間で視線をいったりきたり。


注文したオレンジジュースが運ばれてきて、そのグラスはきれいなピンク色をしたステンドグラスのグラスだった。


良く見たらお花が彫られている。


わぁ!おっしゃれ~!!


……と感心してる場合じゃない。


そろり……あたしは叔父貴の向かい側に座ったおばちゃんを見ると、おばちゃんは同じお花の絵柄が描かれた陶器の洒落たコーヒーカップに一口口を付け、ゆっくりとソーサーに置いた。


おばちゃんは困ったように吐息をつき




「千里、それから龍崎さん―――そして朔羅ちゃん



ごめんなさいね」





と、腰を折って丁寧に頭を下げた。








< 75 / 439 >

この作品をシェア

pagetop