godlh
相談
―――あいつ、愛内さんになんて言ったんだ。
僕の頭の中には、今、それしかなかった。先生の言葉なんて、ひとつも入って来ない。愛内さんの、あの今まで見た事のない表情・・・ただ、愛内さんがあいつの事を気に入っている、それだけは間違いないと思っていた。
―――愛内さんって、あんなかわいい仕草もするんだ。
いつの間にか、僕の頭の中は、愛内さんのあの可愛らしい表情の事に変わっていった。
―――愛内さん。愛内さん。
僕は気がついた。今まで、愛内さんの事を好きだと思っていた。でも、それは違う。いや、違わない。意味が違うんだ。僕は、小学校の頃にあった先生への憧れとか、そんな感じの気持ちで、愛内さんの事が好きなんだと思っていた。たぶん、これがテレビなんかでやっている“愛している”って事なんだと。
そんな風に思った途端、急に今まで感じた事のないような胸を締め付ける感覚が、変にくすぐったい感じがした。
その感覚と対照的な感覚も同時に生まれた。腹の底から怒りがこみ上げてくると言うか、胃がムカムカすると言うか、これもはじめての感覚だった。でも、これがなんの感覚か、僕にはまだわからなかった。

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