godlh
憂鬱から喜び
駅に向う途中、朝の憂鬱な出来事を、愛内さんは思い出していたのだろう浮かない顔をしていた。
「愛内さん。」
その声に、すぐに彼女は反応した。きっと、僕が同じように話かけても、そんな風に振り向いてくれる事はないだろう。そして、その笑顔を見たら、世界中の男達は、絶対に振り返るだろう。それくらいに眩しい笑顔が、あいつに向けられていた。
「あ、彫野君・・・。」
あいつも、愛内さんに負けないくらいの笑顔で、彼女に手を振り、そのまま駆け寄ってきた。
「電車で帰るの？」
駅を指差して聞いた。愛内さんは、その質問に少しだけ頬を赤らめて答えた。
「うん。もしかして、彫野くんも？」
その表情は、何かを期待していた。
そして、あいつの答えは、彼女の期待している通りの答えだった。
「そうだよ。一緒に帰る？」
「うん。」
あいつの表情は、愛内さんの答えがまるでわかっていたような、そんな顔をしていた。愛内さんの表情は、あいつのその言葉に喜びを隠せない様子だった。
ふたりはたわいもない話をしながら、そのまま、駅の中へと向かっていった。
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表紙・目次

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