godlh
リアを、気遣うような感じで、梢はゆっくりとあゆみの家を目指した。ただ、ふたりとも、引っ越しの手伝いに来た時以来、あゆみの家に遊びに来る事はなかった。それは、あゆみの祖母の体調が良くないという事を知り、気遣っての事だった。
「確か、ここら辺だったよね。」
「だよね?」
ふたりは少し不安になった。それでも、何かを信じ、思うままの道を進んだ。
「梢ちゃん、大丈夫、この道?」
リアは、明らかに自分の記憶にない道を見て、心配になった。でも、先頭を歩いている梢は、そんな事に気がついている様子はなかった。
「だ、大丈夫。大丈夫。この道、通った・・・気がする・・・。」
“気がする”は、声が小さくなりすぎて、リアには聞き取る事が出来なかった。梢は負けず嫌いだ。そのせいで、間違ったと告げる事が出来ず、ただ目の前にある道を突き進んだ。一歩進むごとに、不安はどんどん膨らんでいく。もう、梢の不安が限界になり、引き返そうとした時だった。
「あっ。」
「あっ。」
急激に、不安はしぼんだ。
記憶にある光景に、思わず声が漏れた。
目の前には、大きな公園があった。この辺で、大きな公園と言えばひとつしかない。そして、この公園のすぐ隣にあゆみの家があるのだ。
梢は思わず走り出した。けれど、すぐに止まって振り返った。
「リア。大丈夫?」
リアは、返事をする代わりに走り出した。それを見て、梢も再び走り出した。公園の中央に生えている大きなイチョウの木が、どんどん、どんどん近づいてきた。

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