godlh
公園の木々の間から、見覚えのある後ろ姿が見えてきた。
―――あゆみ?
ふたりの走るスピードは、さらに速くなった。近づくにつれ、その後ろ姿が、あゆみだと確信できた。公園の木々が途切れ、ふたりはあゆみの後ろ姿を、はっきりと見る事が出来た。
でも、声をかける事が出来なかった。
「あれって・・・。」
「だよね・・・。」
あゆみの右隣には、昨日転校してきた彫野の姿があった。ふたりは、とても楽しそうに会話をしていた。あまりに楽しそうな姿を見たせいだろう、梢はヤキモチにも似た気持ちになっていた。
「なんなのっ。」
今日、迎えに来る事は、あゆみには黙っていた。だから、あゆみが彫野と一緒に学校に向かおうと、それは彼女の自由だ。その事は、梢も理解していた。けれども、心の中からわき起こるこの感情を、抑える事は出来なかった。
「梢ちゃん・・・。」
リアも、梢ほどではないにしても、気持ちは同じだった。ただ、あまりに気持ちが高ぶっている梢を前にすると、なんとなく自分の気持ちを押し込み、梢を制止する側にまわった。
「しょうがないよ。私たち、あゆみちゃんに何も言わないで、勝手に来ちゃったんだから。」
そうは言うものの、気持ちが完全に押し込みきれないためか、言葉にキレがない。そして、それは梢にも伝わった。
「リアだって、同じ気持ちじゃないの?」
「うん。そうだけど。」
「だったら、もっとなんか、こうあるでしょ。」
どんどん、気持ちが高ぶり、梢は自分で何を言っているのか、自分でもわからなくなっていた。そして、なぜかわからないまま、その大きな瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。リアにも、梢の涙は伝染した。

ふたりは、そのまま駅へ引き返した。
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