godlh
殺す視線
あいつが転校してきてから、はじめての体育の時間だ。
僕の学校では、体育の時間はそれぞれ男女に分かれて、ふたつのクラスが合同で授業をする。そんな感じになっていた。だから、隣のクラスにいるあいつを観察するには、もってこいの時間だった。同じ事は、惟も考えていた。僕たちは、先生の話そっちのけで、とにかく、あいつに注意をはらった。
「惟、気をつけろよ。」
「わかってるよ。お前こそ、気をつけろよ。お前、愛内の事になるとダメダメだからな。あんまりあいつの事見過ぎて、因縁つけられるなんて真似だけは勘弁してくれよ。」
「わ、わかってるよ。」
そう言いながら、内心冷や汗ものだった。
実は、もうさっきあまりに見過ぎて、あいつと目が合っているのだ。その時は、とっさに視線をそらして逃げる事が出来た。けれど、あの視線は確かに、情報通り、人を殺すのに十分なものを持っていた。
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