*偽りの仮面を被った王子様*

それって、きっとそういうこと……。




――ああ、どうしよう。

最悪の状況なのに、ファビウスが抱きしめてくれる今が嬉しいなんて……。


だけど、ファビウスはただ泣いているあたしをなぐさめようとしているだけだ。

だからきっと、抱きしめてくれるこの腕もすぐに解かれてしまう。




実の父親や母親。

あたしを育ててくれたシスターたち。


誰も彼もがあたしを捨てたんだ。


みんなにとって、あたしは必要のない人間。




だったら、ファビウスだって同じこと。

ファビウスもきっと、あたしを邪魔者だと思っているハズだから……。


そう思うと、また胸の奥がキリリと痛んだ。


しばらく沈黙が続いたのち、口をひらいたのはあたしじゃなくて、ファビウスだった。


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