哀しみの瞳
秀は、何処へ帰るでもなく、街のネオンの中に立っていた。
手には、途中で買ったワインを一本。
お酒は、一滴も飲めないひでだった。


お酒を飲んで、酔っ払う事で、暫くは、理恵の事を考えずに済むのではないかと思った。


頭の中がぐるぐる回り、自分がまっすぐに歩く事が困難になっていた。


(理恵??理恵!!心の中で何度も呟いてみる。
今頃、何処でどうしているんだ?身体の具合は、大丈夫なのか?俺には、何をも、確かめるすべは無い。理恵?何処かで、ひとり泣いているんじゃないのか?今すぐにでも、理恵の居る所に飛んで行きたい!
そしたら、もう二度と離したりはしない!!



っと。体がふらついて、誰かと肩がぶつかった。


(男)
「何処見て、歩いてんだぁ?ええっ!この野郎!!!」

秀はただ、訳が分からず、声のする方を見た。



(男)
「何だ!貴様は…自分から、ぶつかっておいて、謝りもしないのか?ええっ?」



秀は、頭の中があまりに回るせいで、体がふらつく、答える前に、自然とまた、ぶつかってしまった。



(男)
「てめぇ!謝りもしないで!生意気な―――」


殴り掛かってきた。他にも、仲間がいるようだった。

頬に鋭い痛みが走った。
お腹や、背中、腕、のすべての肉体から、痛みが走り、秀はもう意識が薄れてきていた。

このまま、打たれながら、死んで行くのだろうか?

それは、それでいいのだ。今の苦しむから、逃れられると思った。
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