哀しみの瞳
秀一は、そんな訳で、まごころ園で育てる事になった。
朝9時から夕方5時まで、理恵は、まごころ園内にて、働きながら、秀一の面倒をみて、5時になると、秀一を連れて、おばあちゃん家に帰るという日々が続いた。



秀一は、みんなの願いが通じたかのように、ミルクをよく飲み、よく眠り、よく一人で、おもちゃで遊び、母が抱きに来るまで、本当におとなしくしている子であった。



回りがどんなにうるさくても、眠る時はよく眠っていた。回りが、静かにしている時は、おもちゃをくわえ、おもちゃを見つめては、静かに一人遊んでいた。泣くのは、オムツを替えて欲しい時とお腹がすいた時だけだった。





秀一が3才の誕生を過ぎた頃の事



高熱がなかなか下がらない時。医者から貰ってきた、解熱剤と飲み薬でも、熱が治まらず、理恵は、心配のあまり、近所にある神社へ行くと言い出した。もう寒くなってきてるからと重子に止められたにもかかわらず、一人着の身着のまま出かけていった。理恵は前によんだ本の中に、お百度参りという、お願い事を叶えてもらう為にする行為の事を読んだのを、思い出し、それを今自分も、わらをも掴む気持ちで始めてみた。


秀一にもしもの事があったら、私は秀に顔向けが出来ない。また私は生きていけない!
どうか、お願いします。私の命と引き換えにしてもらってもいいですから、秀一を助けて下さい。神社の鳥居から、理恵は100回往復し、秀一の回復を祈った。自分の身体がふらつくのも構わずに~
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