哀しみの瞳
自宅を出て一人遠い見知らぬ所へ出掛けるなんて…由理にとっても、初めての経験であった。



おばさんも、美紀さんも、本当に心配をしていた。
が、秀一に会いたい一心であった。



こんなに長い間、秀一と離れ離れになる事など、一度も無かった。



秀一が、家を出てから、暫くは、ホームシックに掛かったような、感情が起きてしまい、美佐子さん達を困らせてしまった。夜になると、不安で泣きながら毎日朝を迎えていた。


一緒に居る時は、あんなに嫌ったのに……どうして自分は…遠くへ行ってしまえ!何て言ってしまったのか!後悔ばかりの日々を暫くは送った。



秀にどれだけ、慰められても、由理の気持ちが晴れることは無かった。


自分は、秀一が居たからこそ、自分でいられたのだということを、今更ながらに、気付くのであった。



母親に置き去りにされた、迷子の子供のように、不安で不安で堪らなかった。



精神を鍛えようと、空手を始めた。朝早くのジョギングにも、挑戦してみた。



けれど、夜になって一人になると、無性に寂しさが、込み上げて来て、涙が止まらなくなるのであった。



側に居るべき人が居ないというのが、こんなにも、哀しかったなんて…………
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