哀しみの瞳

真の家族

秀一は、昨夜は、一睡も眠ることが出来なかった。



やはり由理を一人で返すことは、出来なかった。



家に着くと、全員が出迎えてくれた。



(美佐子)
「秀ちゃん!お帰り!由理ちゃん!貴女…みんな心配してたのよ!!…」


秀が、由理に近付いて来て…


「パシンっっ」由理の頬を叩いた。秀が、手をあげたのは、初めてである……



(秀)
「どれだけ、心配したと思ってるんだ?一人で勝手に家を出て!ちゃんと、言ってみなさい。どういう事なのか!」


由理は、初めて叩かれた事に驚いたのと、こんなに恐い顔をした秀も初めて見た。



言葉が出なかった。



(秀一)
「何も、殴ることないじゃないですか!15才の由理には、あまりにショックだったんですよ!……」



(秀)
「お前には、聞いてない!由理に聞いてるんだ!!!」



(由理)
「私が…私が父さんの娘じゃなかった!……そんなこと、今まで、思いもしなかった!父さんとも、しゅうとも、血がつながっていないなんて…私っ…私……」


泣きながら、秀に抱き付いていった。


(秀)
「何、言ってんだ?由理?あんな、紙切れ一枚に書いてあることを信用するのか?お前は?……赤ちゃんの頃から、秀一と一緒に育って、1才過ぎから、ここで父さんの娘として、育ったんだぞ!親子でなくて、何なんだ?由理は、それを見ただけで、父さんが父さんでなくなるのか?」



(由理)
「父さん…ごめんなさい……ごめんなさい !!!」



(秀)
「由理!!由理は、俺の、たった一人の娘だから…判った?これから、こんなことするんじゃないぞ!いいな?」
抱き締めて、(よしよしとしてやる)


美佐子も美紀も、すすり泣いている


秀一も言葉を失う。
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