哀しみの瞳
高橋夫妻は、どれ程の下準備をしていたのか……
すべての手配を、驚く程の速さで済ませ、由理は、あっという間に16年間住み慣れた家を慌ただしく引越しをして出て行ってしまった。



最後まで由理は、秀一が別れに来てくれるのを待っていた。が秀一は、帰っては来なかった。


秀は、今は後悔などはすまいと自分の心に硬く誓っていた。


今なお秀一に恨まれようとこうすることが二人にとっても間違いはないと思っていた。



秀一が、本当の自分の気持ちに気付いたように……きっと…やがて由理も、いずれにせよ自分の気持ちに気付くはずであると……秀は、確信していた。



が…それまで若い二人は、どれ程の哀しみを乗り越えなくてはいけないのだろうかと思うと気が遠くなってくるのであった。
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