哀しみの瞳
第6章 運命

由理の事情

由理は、高橋夫妻と、その家に着くまで、一言も話さなかった。


胸の中は、秀一のことで一杯であった。


どうして秀一は、最後まで、由理と会おうとしなかったのか?その意味は、何処に、何の訳があって………


何時…何処にいても、由理のことを一番に考えてくれていた秀一が……


どうして?……何故?……


哀しいというより、辛くて、苦しくて、どうしようもなかった。


本当の両親と暮らすことなど、由理にしてみたら、どうでもよかった。


そのことより、秀一に、自分が、突き離されてしまったという事実が、由理を両親の元へ、行かせたと言ってもいい位、由理にとっては、ショックが大きかった。


小さい頃から、由理にとって、秀一は、兄であり、母親のような優しさと、父親のような厳しさを持って、接してくれる、いつまでも側にいる存在で、無くてはならない、唯一の心のよりどころであった。


そして…理想の男性でもあった。


何時の頃からか……淡い恋心すら抱いていた。


その想いは、由理の中で一年一年、強くなっていってることも、自分で気付いていた。



だから………だから、あの時……兄妹じゃないと、判った時………



ショックで……ショックだったけど、直ぐに立ち直れたのは……



私が、秀一を………愛することが…許されるんだって思えたから……



でも………そんなこと思ってたのは、私だけだったんだ……


さようなら!しゅう………


もうっ……私達他人だもんね……
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