哀しみの瞳
高橋の家は、閑静な住宅街の中にあり、その中でも一際目立つ立派な家であった。



由理の部屋は、驚く程見事な、それはそれは女の子らしい部屋であった。


しかも、寝室と勉強部屋は、別々になっていた。



クローゼットを開けてみると、高校生が泣いて喜ぶような洋服が、さり気なく、何着も掛けてあった。



「はあーん……」 由理は、何とも言えぬため息を付いてしまう。



そうしている時、みち子が、部屋の外から、声を掛けてきた。



(みち子)
「由理ちゃん?……ちよっといいかしら?」


(由理)
「ああっ、はい!どうぞ!」


みち子が遠慮がちに中に入って来る。


(みち子)
「由理ちゃん…学校明日からだけど…」


そういえば…新しい学校の制服が、クローゼットの中に掛けてあった。


(由理)
「ええっ、勿論大丈夫ですよ!もうっ!直ぐに行って早く慣れないと…あと、バスケ部も見て来たいし…」


(みち子)
「明日だけでも、一緒に……」



(由理)
「そんなこと…気にしなくて、いいですから、一人で大丈夫ですから…」


(みち子)
「…分かったわ!何か気付いたことあったら…何でも言ってね?私そうでないと、心配で……」


(由理)
「気にしないでください!どうか普通にしててください。ただ…部屋があまりに凄いので、暫くは、眠れないかもしれないことぐらいで…」



(みち子)
「直ぐに慣れるわ!何かまだ必要なものがあったら、直ぐに言って、遠慮しないでね!」

(由理)
「差し当たり…バスケ部に入る事になれば、色々と揃える物がありますので、お願いします」
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