哀しみの瞳
由理と秀一が病室に戻ったのを確かめた高橋夫妻は、そのまま病室のドアを閉めた。



秀と三人で話す為に、一階にある談話室にやって来た。



(高橋)
「吉川さん?あれは、いったい、どういう事なんでしょうか?秀一君というのは、由理にとっては、んんっ、私達にはどうしてなのか、分からないのですが」



(みち子)
「あなた?私…あの娘がうちに来てからというもの…ずっとおかしいなって、思ってた事があるんですけど…毎日のように朝と夜に部屋の窓から外を眺めていたのよ!あれって、もしかして…秀一さんが来てくれるのを、待ってたのかしらね?今から思えばですけど。」



(秀)
「そんなこともあったんですか!それはっ、おっしゃる通り、秀一が、迎えに来てくれるのを、ひたすら待ってたのでしょうね!間違いなく、言葉に出して言えない分、長年に渡って、積もりに積もってしまってたのでしょうね!」


(高橋)
「いやっ、しかし…そうだとしても、私がまだ分からない部分があるのですよ!……」



(秀)
「高橋さん!あの二人を見てて、分かりませんか?分かったでしょう!今頃は…あの二人も、それに気付いているはずですから!」



(みち子)
「じゃあ!あの二人は……そうだったんですか…吉川さんは、そのことに、前から?気付いてらした?ということですか?」


(高橋)
「私は、その…まだ良く理解できていないようですが…」



(秀)
「まぁっ、いずれわかる時が来ますから。見守ってやってください!何より、二人がしあわせになる方を、私達は、考えてやらないといけないのですから!そうでしたよね?高橋さん!!!」
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