哀しみの瞳
玄関に入った途端、秀は何かを踏んだと思った。何だろうと、拾って見た。

2枚に折った、可愛い絵柄の手紙だった。


「ひで? いきなり訪ねて来てごめんなさい。理恵は、思い切って、一人で、ひでの所へ来てみました。今電車の中で手紙書いてます。もしも、会えずじまいになったら、アパートに手紙入れて帰ろうと思いました。突然どうして、一人で、ひでに会いに来たのかって?

ずっと、ずっと、ひでに会えないでいたでしょ?理恵は本当は、とても淋しかったの。高校生活も、もちろん部活も、まぁまぁ楽しいし、沙矢ちゃんとも、相変わらず仲良くしてるし、武さんも本当やさしくしてくれてて、理恵は、これ以上、贅沢いったら、いけないって、いつも思ってた。でも、ひでに会えないのが辛かった。悲しかった。何より正直に、ひでにそのこと、言えないのが、苦しかったの。

だから、理恵は、沢山ひでに、話したい事あって…



ここで文章は途切れていた。泣いて書けなかったのか?駅に着いて書けなくなったのか?



待てよ! まだ、電車間に合うかな?

秀は、駅まで走った~

理恵! 理恵!

せっかく来たのに、会えなくて。どれだけ悲しんでるか!



無情にも、電車は、駅をとっくに、出てしまっていた。



手紙を握り締めて、秀は思わず座り込んでいた。




理恵?俺も理恵に会いたかったんだ。理恵に会えないことが、こんなにも、淋しくて辛いんだって事、気付いたよ!きっと理恵もそうなんだろう?
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