哀しみの瞳
理恵が駅に着くと、雨が降っていた。でも、どうでもよかった。理恵はとぼとぼと濡れながら、家まで帰り着いた。雨で濡れているのか、涙なのか、母に気付かれずに済むと思った。


「ただいま」小声で言う。


母が奥から走って来る。


「こんな時間まで、何処へ行ってたの?あらっっ、ずぶ濡れじゃないの!どーすんの!風邪ひくわよ!もうっ、この子はっ」

バスタオルを持ってきて、拭いてくれながら。


「すぐにお風呂に入って! 何て事するの?貴女は風邪ひくとなかなか治らないのよ!分かってるでしょ!もうっ」奥から、父さんが、怒っている。


「こんな時間まで、何処で遊び歩いていたんだ?高校生になった途端にこれじゃぁ、勉強だって、してるか、どうだか、分かったもんじゃない!」


「ほらっ、もうっ、また父さんに、叱られたじゃないの!母さん、嫌だからね、いつもいつも、貴女の事で叱られるの。もうっ分かってちょうだい!」



何も言えずに、お風呂に入り、まっすぐにベットへ…

体は疲れているのに、気持ちがなかなか休むことが出来なかった。


体がだんだんと、熱くなってくるのが自分でも分かった。



案の定、次の日からは、風邪との戦いになった。
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