哀しみの瞳
後日、やはり君子は、やって来た。
待子の嫌な予感は的中した。



「先日は、お宅に秀はまた、来たんですね?」


「ああっ、はい!その後、そちらには、秀ちゃん、寄らなかったんですか?」


「何でぇ、此所に先に来るんでしょう?私と主人は遅くまで、お祝いの膳を用意して、待っていたんですよ!もう本当に!何て子かしら」



「すみません!少し理恵の事で話し込んでしまったものですから」



「またまた理恵ちゃんの事?もう沢山だわよ!待子さん、先日私の言った事、覚えているでしょうね。今度からは、うちの秀はもう弁護士として、しっかりと生きていかなくてはいけないのよ!現役で弁護士になれたといっても、これからが大変なのよ!」



「ええっ、お義姉さん、私もちゃんと考えていますので」



「どう考えてらっしゃるのかしら?」



「理恵は、九州の熊本の姉の所へ行く事になりました。高校を卒業したら、あちらの大学へ入れてくれる事になってますから、もう、秀ちゃんの足手まといになる事はありませんから、ご心配なく!」


「あらっっ、そういう事なら、よかったじゃない!理恵ちゃんも、そちらに行った方が、しあわせなんじゃなくて?」



「でも、お義姉さん、この話はまだ、理恵には、してないので、追々見計って、言おうと思ってますから」


「とにかく、今後一切、家の秀の足を引っ張らないでやってちょうだい。理恵ちゃんにも、そのことだけは、言っておいてね?頼みましたわよ!もうっ!!」



お義姉さんは、いつも自分の言うことだけ言ったら、帰っていくのだから。 でも、どうしてあんなに気の強いお母様からあんな優しい息子が生まれるのかと、つくづく待子は思うのであった。
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