危険なアイツと結婚生活
再び訪れる沈黙。
ボーカリストは震える蒼をまだ信じられないという目で見ていた。
……そうだよね、だって、蒼は碧。
恐らく日本中に知らない人はいない。
だけど……
だけど、彼は蒼を見てふっと笑った。
心底楽しそうな笑いだった。
「何謝ってんねん、自分」
そう言って、まるで子供にするようにその頭をくしゃっと撫でた。
「泣くなんて、らしくないぞ?」
「え……」
蒼は涙を拭い、再び彼を見上げた。
そんな蒼を優しい見下ろすボーカリスト。
「ありがとな、感動してくれて」
「……」
「自分らの技術も大したもんやねん」
「ふっ……」
蒼は再び顔を押さえ、ベンチに座り込む。
そして、ずっと身体を震わせていた。