危険なアイツと結婚生活
「戸崎さん!
会社に戻ってきてくれますよね!?」
中山さんが泣きそうな顔で蒼にすがる。
そんな中山さんを、蒼も泣きそうな顔で見た。
「楽しかったよ。
ありがとう」
「おい、戸崎……」
中山さんや蒼だけじゃない。
北野さんだって泣きそうな顔をしている。
「四年間も黙っていてくれて、ありがとう。
普通に接してくれて、ありがとう。
馬鹿に付き合ってくれて、ありがとう」
「じ……冗談言わないでくださいよ!!」
蒼は顔をくしゃくしゃにした中山さんを見て、いつものように穏やかに笑った。
その笑顔を見て、悟った。
蒼は本気だと。
もう、あの職場に戻るつもりはないと。
「どうせ都内にはいるから、誘ってくれたら飲みに付き合うよ」
「……てめぇはしばらくアルコール禁止だ」
優弥さんが殺意に満ちた目で蒼を睨んでいた。