危険なアイツと結婚生活
「そういえば艶さん、明日は艶さんの自伝、『Fと俺と』の発売ですね」
司会者の言葉に、
「えぇ。
初めての書籍にしては、内容の濃いものだろうと」
優弥さんは無愛想に答える。
そして……
「えぇぇ!?」
あたしは大声で叫んでいた。
優弥さんが自伝を出す?
そんなこと、初耳だった。
大抵のことは何でも教えてくれる蒼、そんな蒼の口から何も聞いていないってことは……
「あ。忘れてた。
明日おっさんの本の発売日だったんだ」
ケロっとしている蒼。
どうやら、蒼はさほど興味もなさそうで。
蒼の中では小さな出来事で片付けられているのだろう。
……そう思った。
……思ってしまったんだ。
だから、蒼の言葉の語尾が震えていることになんて、全く気付かなかった。