危険なアイツと結婚生活
だけど……
「ねぇ、あたしこれから紅白のリハーサルあるんだけど」
麻衣子ちゃんは全く気にしないようだ。
ズカズカと蒼に近付き、何とその胸ぐらを引っ掴む。
何が始まるんだろう。
青ざめるあたし。
驚くわけでもなく、すごく嫌そうな顔をしている蒼。
「送ってよ」
明らかに人に物を頼む態度ではない。
「スタジオまで、車だしてよ」
蒼は顔を歪めたまま、麻衣子ちゃんの手を振り払う。
そんな蒼を見て、麻衣子ちゃんは苛立ったように舌打ちをした。
熱のことなんて忘れ、あたしはこんな二人をハラハラしながら眺めていた。
麻衣子ちゃんが居候するようになって、こんなやり取りは日常茶飯事だ。
そして、一番ストレスを感じているのは蒼だろう。
麻衣子ちゃんがどうして帰りたくないのか分からないけど……
これ以上うちにいるのもよくないなと本気で思った。