危険なアイツと結婚生活







「戸崎さん、今回の入院は個室希望なんですね」




小野先生があたしに言う。




「はい。

あたしは大部屋で良かったのですが、主人が気にしてくれて」






そうなのだ。

入院なんて疲れるからと、蒼はあたしを個室に入れてくれた。

お金が足りない時なのに。

なのに、俺が稼ぐからいいってなんて言ってくれて。

優しい蒼。

あたしのことを、本物に大切にしてくれる。







「まぁ、あれですね。

戸崎も個室のほうが都合がいいんでしょうね」



「?」



「なんといっても、戸崎は最近またブレイクしている有名人ですし。

前回の入院の時みたいに、見世物になるのも嫌なんでしょう」



「そうですよね……」





そうなのだ。

前回の入院では大部屋だったあたし。

蒼ははじめこそバレていないが、やっぱりバレてしまって。

同室者の知り合いなどに追い回されるハメになった。

気の毒で、お見舞いなんて来なくていいと言ったのに、蒼は毎日来てくれた。

本当に、本当に優しい蒼。

大好き。



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