危険なアイツと結婚生活
「戸崎さん、大変ですね」
後輩のみよちゃんがあたしに耳打ちし、あたしは再び飛び上がる。
だが、
「大丈夫ですよ、そんなに警戒しなくても」
みよちゃんは楽しそうに笑っていた。
「誰も戸崎さんの旦那さんが碧だなんて思いませんから」
そうなのだ。
あたしの部署の一部の人のみが真実を知っている。
結婚式に来てくれたから。
だけど、それは他言しないと暗黙の了解になっていたのだ。
「それにしても、旦那さんかっこいいですよね」
みよちゃんが意地悪なことを言う。
蒼はかっこいい。
それは言うまでもない。
だけど、蒼が持て囃されれば持て囃されるほど、あたしは惨めになる。
月とスッポンだって。
だけど……
それは過去の話。
何も感じないと言えば嘘になるけど、随分慣れた。
そして、受け止められるようになった。
だって、蒼は八年間もあたしを好きでいてくれたから。
その事実は嘘ではないから。