アイドルとボディガード

エピローグ






10年後。



あれから僕と桐生君は、千遥には内緒でこっそりメールでやり取りしていた。

そこに僕は毎回のように千遥の近況報告をたしなめる。


彼は千遥の成功を誰より願って自らがそれを妨げるようならと身を引いた。

そんな千遥は彼の思惑通り、若手女優として今頑張っている。

今回の知らせは今までにない飛びっきりのものになるだろう。

そんな彼女の活躍を知らせようとキーボードを打つが、その手をふと止める。


……やっぱり教えてやらない。

この10年間千遥がどれだけ苦労してきたと思ってるんだ。



桐生君が言った、女優として成功した先、そこに千遥はやっと辿り着いた。

そこは、日本のどんな有名女優でも達成した人はいない場所。

本当に桐生君も容赦ない。


だけど千遥は諦めず、ひたすらそこに向かって突き進んできた。

ここまで彼女を突き動かした原動力は、全て桐生君。

君だったんだから。



そしてやっと、千遥の一番の夢が叶う。









空港で颯爽と降り立った彼女。

黒く綺麗な長い髪に、あの頃よりすらりと伸びた背。


しかし、胸元の物足りなさは変わっていない。
それは今でも禁句だが、彼女は気にしていないと言わんばかりに強がる。

胸元のあいたワンピースは、細身なボディラインに沿ったデザインになっている。
色は彼女の一番好きなブルー。


あのクソガキと桐生君に罵られていた頃より格段に成長した。

そんな彼女は桐生君の姿を見つけるなり、サングラスを外して彼の元へ一直線に走り出す。

ハイヒールで走る音が空港内に響く。

大きく澄んだ瞳と悪戯っぽく笑うあの表情はあの頃のままだ。

だけど、今じゃ誰もが認める日本を代表する女優。




そんな彼女の姿に気付いた彼。

桐生君はその変貌ぶりに息を飲んで目を見張ると、やがて照れくさそうに口を開いた。



「まいったな」

彼女は周りの目も気にせず彼の胸へ飛び込む。


「桐生!」


今日ばかりはお目付け役の僕も手出しはできない。

成功した先が、世界三大映画祭の舞台と分かってから、彼女はそれを制覇すべく死にもの狂いで頑張ってきたんだ。

それは、僕が一番知っているから。


空港で彼女の登場を待ち構えていたカメラ達がこぞってフラッシュを浴びせる。

明日の日刊新聞にはどんな見出しがつくだろう。


ただ、大好きな人に会いたいがために。


10年越しに叶った再会に彼女は泣きながら笑っていた。

桐生君はそんな彼女を愛しそうに優しく抱きしめた。









【アイドルとボディガード】 完

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