キミとひとつになれたら
振り向かなくてもわかる。
この声の主が誰なのか。
私は振り返らず、走って逃げようとした。
「待って…!」
案の定、腕を掴まれ、引き止められた。
「小春ちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫、だよ…」
「泣いてるの?」
バレた。
声で泣いてる事がバレた。
「……帰る」
「中に入りなよ。どうせ誰もいないから」
「いいよ……」
ふり払おうにも、振り解けない腕。
「っ…小春ちゃんっ!いい加減にしなよっ!!」
グイっと腕を引っ張られ、私の体はすっぽり彼の胸の中に。
「ここへ来たって事は、少なくとも僕を頼ってここに来たって事でしょ?だったらここは素直に甘えて?僕に……頼ってよ」
耳元で優しく囁かれたそれは、麻酔のように全身を痺れさせた。