涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
“東京の家族”という言葉に驚かされた。
夕凪の母親は再婚して、新しい家族を作っていた。
いつ再婚したのか知らないけど、
もしかして子供もいるのだろうかと考えた。
夕凪と父親違いの兄弟。
会ってみたい気もするし、会いたくない気もする。
夕凪だけ一人ぼっちにしてと……
どうしても夕凪寄りの考え方になってしまう。
母親は夕凪の髪を撫でていた。
夕凪は体を強張らせる。
手を払うのではないかとビクビクしたけど、夕凪はそうしなかった。
不愉快そうな顔で、我慢していた。
母親は優しい声で、夕凪に言う。
「今までごめんね。母親失格なのはよく分かっているの。
これを機会に、今までの償いをさせて欲しい……」
「そんなのいりません」
「そんな淋しいこと言わないで。
これからは母親らしく、夕凪の側にいるわ。
さっき病院の先生に、転院の手続きをお願いしてきたの。
東京の大病院にツテがあるから、そっちで治療しましょう?
退院後もお母さんと一緒に。
うちの家族もみんな、夕凪と暮らすのを了解してくれたわ。
夕凪の将来はお母さんが守るから、何も心配いらないのよ」