涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
無言のまま数秒見つめ合ってから、夕凪が口を開いた。
「プロになった時に、言おうと思ってた。
潮音、結婚しよう。今すぐ」
「…… 今すぐ?」
「そう、今すぐ。役所に直行」
この場でのプロポーズにも驚いたけど、“今すぐ”と言われて目を丸くした。
いつかは結婚すると思っていても、まだ19歳。
その日はもう少し先だと思っていた。
夕凪は“プロになったその日に結婚する”と決めていたみたい。
婚約指輪まで準備していて、目の前にブルーサファイアの輝く指輪を見せられた。
かなり驚かされたけど、やっぱり嬉しかった。
喜びで苦しいほどに、胸が一杯になった。
「返事は?」
と夕凪に催促される。
さっき止まったばかりの涙が、
また溢れていた。
返事を言葉にできなくて、
ポロポロと雫をこぼしながら、何度も何度も頷いた。