また、
桜庭弘平
もう何年前なんだろうか。俺は死んだ。

目の前で自殺した翔平。昔から仲がよくてたくさんたくさん話をしたはずなのに、何もあいつをわからなかった。
天気がよかった。それは覚えている。いきなり俺の名前を叫び教室に来た翔平はどこか嬉しそうで、俺は思わず笑った。昔の翔平みたいで嬉しかった。でも手にもつ花束の意味がわからない。なんなんだろうか。
屋上まで走った。ニヤニヤする翔平をよそに俺は何か不安でどこか危ない翔平を見つめた。花束を俺に渡す。白い菊ばかりの花束に顔をしかめた。
「また、来世で。」
翔平は目の前から消えた。手を伸ばしたのに触れることもかすることもなく翔平の体が落ちて行く。
「翔平、翔平!!!」
嫌な音がした。ピクリとも翔平は動かない。俺はその場で動けなくなった。
「翔平、翔平、翔平・・・どこだよ。」
菊の花束のなかにくしゃっとなったルーズリーフを見つけた。
『大好きだ!弘平が大好きだ!大好きだー!!!』
短い遺書だった。でも俺には何よりも重く、すべてを理解するためにあまりに十分な手紙だった。
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