虫の本
「やかましいっす。でもまあ、そのお陰でうちの店は珍味には事欠かないし、結果的には黒字なんすけど……彼、自分が採ってきた食材で作った料理を大量に食べていくんすよ。代金を払わずに」
「当然の権利だな、うんうん」
それは立派な無銭飲食だろと漏らす少年に、ルフは「いやあ、立派だなんてそんな」と照れ笑いを返す。
話の通じない彼の言動に、少年はなるほどと呟いた。
話は通じないし、金は持ってないし、食材と共にトラブルまで持ち帰ってくるが、店にとって利になる人物であるため無下にはできないのであろう。
ルフが入店禁止にならないどころか、こうして我が物顔で店内で食事が出来るのも、彼の功績のお陰といった所か。
と同時に、少年は悟る。
いくら目の前の刺身が美味かろうと、絶対に手を出してはならない、と。
滅多に市場に出回らない珍味に、いったいどれだけの値段がつくものなのか、彼には見当もつかなかった。
「立派で思い出した。叶、あれはもう仕上がってるんだろ?」
「あれ? ああ、どっちも仕上がってるっすよ」
いま取って来るっすと言葉を残し、叶は素早く一旦店の奥へと下がっていった。
その身のこなしは機敏で隙も無駄も無く、見る者には彼がただ者ではないかのような印象を与える。
実際に料理の腕前がただ者でない事は周知の事実ではあるのだが、それと彼の体さばきは関係あるまい。
少年はぐるりと店内を見回す。
店内には、叶と厨房にうごめく巨体(!?)の二つ以外に、店の関係者は見当たらない。
厨房の巨体は店に出てくる気配が無いため、叶の身のこなしはウェイターも兼任している為だろう、と彼は納得する事にした。
仮に、お約束として実は叶が武術の達人であるとか、実は実力派の俳優をやっていた過去を持つかであったとしても、それは少年には関係の無い話である。
さて、事務室はルフ達が陣取っているテーブルから見て壁越しの至近距離にある為か、薄壁の向こうから何やらごそごそと音が聞こえてくる。
すぐに叶が戻って来る気配は無いと踏んで、少年はルフに話を振る事にしたようだった。
「何か注文か?」
「だな。けど、今回頼んだのは料理じゃないんだ」
「あんた、料理はしないんだったよな……じゃあ、調理器具でもないか」
「当然の権利だな、うんうん」
それは立派な無銭飲食だろと漏らす少年に、ルフは「いやあ、立派だなんてそんな」と照れ笑いを返す。
話の通じない彼の言動に、少年はなるほどと呟いた。
話は通じないし、金は持ってないし、食材と共にトラブルまで持ち帰ってくるが、店にとって利になる人物であるため無下にはできないのであろう。
ルフが入店禁止にならないどころか、こうして我が物顔で店内で食事が出来るのも、彼の功績のお陰といった所か。
と同時に、少年は悟る。
いくら目の前の刺身が美味かろうと、絶対に手を出してはならない、と。
滅多に市場に出回らない珍味に、いったいどれだけの値段がつくものなのか、彼には見当もつかなかった。
「立派で思い出した。叶、あれはもう仕上がってるんだろ?」
「あれ? ああ、どっちも仕上がってるっすよ」
いま取って来るっすと言葉を残し、叶は素早く一旦店の奥へと下がっていった。
その身のこなしは機敏で隙も無駄も無く、見る者には彼がただ者ではないかのような印象を与える。
実際に料理の腕前がただ者でない事は周知の事実ではあるのだが、それと彼の体さばきは関係あるまい。
少年はぐるりと店内を見回す。
店内には、叶と厨房にうごめく巨体(!?)の二つ以外に、店の関係者は見当たらない。
厨房の巨体は店に出てくる気配が無いため、叶の身のこなしはウェイターも兼任している為だろう、と彼は納得する事にした。
仮に、お約束として実は叶が武術の達人であるとか、実は実力派の俳優をやっていた過去を持つかであったとしても、それは少年には関係の無い話である。
さて、事務室はルフ達が陣取っているテーブルから見て壁越しの至近距離にある為か、薄壁の向こうから何やらごそごそと音が聞こえてくる。
すぐに叶が戻って来る気配は無いと踏んで、少年はルフに話を振る事にしたようだった。
「何か注文か?」
「だな。けど、今回頼んだのは料理じゃないんだ」
「あんた、料理はしないんだったよな……じゃあ、調理器具でもないか」