【短】俺とあの人~狼の恋~
「先生あがり症なのに教師になったの?」


「う‥うん。いつかは克服できると思ってたんだけど…無理みたい」



おかしい。

自分から苦手な世界に入って悩んでるなんて。

そんな人いないと思ってたけど、俺の目の前にいる。


俺はクスッと笑った。



「あっ、今笑ったでしょ!?」


「笑ってませんよ」


「嘘!急に敬語になったのは笑った証拠!」


「ごめん、俺笑ったね‥」



急に強気になったあの人が、また俺の心をくすぐった。




「じゃあ、頑張ってね。先生」


図書室を出ようとした俺に、あの人が声をかけた。


「高橋君!このことは秘密にしてね!」



俺は振り返らないままピースをして見せた。




俺はあの人の存在すら知らなかったのに、俺の名前を呼んだあの人。


なんだか嬉しかった。




もっとあの人に名前を呼んでほしい。


あの人のことが知りたい。







あの人が、俺の世界に入り込んだ…。













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