アンダー・ザ・パールムーン
「…気持ちいいか?もっと声出せよ……
耳に焼き付けるから。
離れても、ゼッテー浮気するなよ…
キョウコは俺の女なんだから…」
先輩が喋りながら、少し乱暴に舌を使う。
『浮気なんて、
絶対絶対しないよ』
言葉にするのは、今は難しい。
波のような快感に占領されて、頭も身体も心も、わたしのものじゃなくなっているから。
先輩が立てるぴちゃぴちゃと湿った音とシーツの衣擦れの音。
それに、わたしのHな声がアンサンブルとなって、白い箱のような部屋にふわふわと漂う。
ーーー行かないで。
一緒にいて。
わたしの身体をこんな風にしておいて、1人にしないで。
想い出なんていらない。
そんなの、いつの間にか手のひらからこぼれて、消えていくだけだよ。
逢いたい時に逢いたいよ……
「キョウコ…可愛いいよ……
すげえ…またこんなになってるし…」
わたしの大きな喘ぎ声は、いくつかのシャボン玉になり、言いたい言葉も涙も切なさも全部覆い隠して、白い壁に天井に融けていった。