涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


ここから見える景色も、空も、通り抜ける風のいい匂いも。


ほんと、昔のままだ。


あの頃のレイのように私もベンチに座って、空をゆびさしてみた。


こうしているとイヤなことを忘れられる。


だから何かイヤなことがあるといつもこうしていた。



『サク!ほら見てみーや』


『なんば?』


『そら、めっちゃ綺麗ばいっ!』



幼い二人の会話を思い出す。


当時のレイはまだほんの7才だったのに、

この空の綺麗さに気づいていた。


そして私に教えてくれたんだ。



『空がこの世界で一番大きいとよ。すごいと思わん!?俺、いつか空を飛んでみたいっちゃん』



レイは本当に空が大好きやったね。

今でも空をゆびさしとるん?



『泣くなって』


『だってぇ…ママのネックレス壊したとよ…?ママ悲しむやん…』



お母さんのお気に入りのネックレスを壊してしまった私はお母さんが悲しむのがすごくイヤで悲しかった。


しくしく泣く私に困ったような表情をしたレイが突然いつものように空をゆびさした。



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