涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。



そしてお母さんは呆れちゃうほど男運のない人だというのは身をもって知った。



「うっせーんだよ!!さっさと酒ば買ってこいち言いよるんじゃボケェ!!」


「やめてってば……っ」



毎日酒に溺れては母に暴力を振るう人だった。


……そんな二人を泣きながら、膝を抱えて隣の部屋から見ていた。


やめてよ……。

お母さんに手ぇ出さんでよ……。


怖い……レイ、助けて。

お願い、レイ……。



「お前の母さんバカと思わんか……?」



私に微笑みかけるその人が、私はめちゃくちゃ怖かった。


泣き叫べば私も殴られたし、
お母さんをかばえば容赦なく蹴られた。


だからその人が暴れだしたら私はただじいっとすることしかできなくて。


何もできなかった。


怖くて、殴られたくなくて、動けなかった。


……私はすごく弱虫で、レイの名前を心の中で叫ぶことしかできなかった。



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