涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


それでも4年もしたらその人は他に女をつくって家を出た。


母の戸籍に二度目のバツがついたのは、私が11才の時。



「ごめんね、サク……お母さんがいかんとよね」


「なん言いようと!これから二人で生きて行くっちゃろうもん?」



意気消沈した母を励ましながら、それからはずっと二人で生きて来た。


生きようと、していた。



「おーい、おるかー?」



それから3年が経ったある日。14才。


近所迷惑なほどのドアを激しく叩く音。
それと聞き覚えのある声にお母さんと顔を見合わせた。


……忘れもしない中2の夏だった。



「なんの用なん!?」


「冷たいなぁ〜。久しぶりの父親との再会っちゃけんもうちょい可愛い顔せえよ」



チェーンをかけたまま扉を開けるとニヤリと笑ったのは3年前に私たちの前から消えたその人だった。


< 19 / 259 >

この作品をシェア

pagetop