涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
それでも4年もしたらその人は他に女をつくって家を出た。
母の戸籍に二度目のバツがついたのは、私が11才の時。
「ごめんね、サク……お母さんがいかんとよね」
「なん言いようと!これから二人で生きて行くっちゃろうもん?」
意気消沈した母を励ましながら、それからはずっと二人で生きて来た。
生きようと、していた。
「おーい、おるかー?」
それから3年が経ったある日。14才。
近所迷惑なほどのドアを激しく叩く音。
それと聞き覚えのある声にお母さんと顔を見合わせた。
……忘れもしない中2の夏だった。
「なんの用なん!?」
「冷たいなぁ〜。久しぶりの父親との再会っちゃけんもうちょい可愛い顔せえよ」
チェーンをかけたまま扉を開けるとニヤリと笑ったのは3年前に私たちの前から消えたその人だった。