涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。
ジト目で彼を見てから昇降口の方へ向かう。
自分の名前の書かれた下駄箱にローファーを入れて上履きに履き替えていた私の隣に圭都が並ぶ。
……もしかして同じクラスなんかな。
「なぁ、元気?」
「元気」
「うそ、絶対元気やないやろ」
「そう思うなら聞かんでよ」
圭都を一瞬だけ見るとそう言って早歩き。
教室を目指して歩く私の隣をなんでもないような顔でついて来る圭都。
早歩きを緩めるとそれに合わせて圭都も歩きを遅くする。
もう、なんなの?
イライラして立ち止まると圭都を見る。
目が合うと「ん?」なんて、のんきな声を出す目の前の男に更にイラっとした。
あー、もう……。
「なんでついて来るん」
「そんなん同じクラスやけんやろ?」
意味わからんし。
同じクラスだとしても、別に一緒に行かんでもよくない?
並んで歩くの、めっちゃイヤなんやけど。
「そーいや麗矢も同じクラスみたいやね」
「ふぅーん、そうなんだ……」
興味のないフリをしてプリーツのスカートについていたホコリを取った。
……知っとるし。見たし、クラス表で。
野村麗矢ってすぐ目に入ったから。