「近未来少年少女」
『その質問にはさっき答えたはずだけど』
Mも足を止めて顔だけをこちらに向けた。その吸い込まれるような瞳を見て俺の足が後退りする。
『そんなに警戒しないでよ。それに君は自分で扉を開けたんだ。考える時間は十分与えたつもりだよ』
Mは笑って再び歩きはじめた。
………………M。
こいつの正体は一体……。
俺は疑いながらもそのまま付いて行った。歩いても歩いてもまだMは足を止めない。
目的地が分からない分、余計に時間が長く感じる。
どこまで行くつもりだよ?
けっこう疲れてきたし。
『………おい、いい加減に…』
俺が声を出すとタイミング良くMの声が響いた。
『着いたよ』
え、着いたって………。Mが足を止めたのは大きな美術館の前だった。
あれ、美術館って事はもしかして……。そう、俺はいつの間にか隣町まで来てしまっていた。
『着いたってただの美術館じゃん』
そう言いながらある違和感に気付く。
Mと美術館?確かあの時……。
『行けば分かるよ』
Mは何のためらいもなく美術館の敷地に足を踏み入れた。口元に意味深な笑みを浮かべながら。