晴れ、時々、運命のいたずら



その日はShipの仕事はなく、夜になっても香織はスタジオに戻ってこなかった。


島根が1人戻ってきたが、香織の事を聞いても何も分からないと言う。



「愛姫さんも今日は帰りましょう。原宿のマンションまでお送りします。」



島根が運転する車の後部座席に乗って、香織の携帯を握りしめる。



(香織…。)



長い芸能活動の中でもShipでの活動は香織にとっても大きなチャンスだったに違いない。


常に自分が一番で、高飛車な態度を取る事があるが、実は一番繊細だったのかもしれない。



「私も香織の事、理解しようと努力しなかった事が悪いよね…。」



居なくなってから思う気持ち。


香織の存在は、愛姫にとってもとても大きかった。


大きいが故に最後まで距離を縮める事が出来なかったのかもしれない。


その後悔が大きく膨らむ。



「愛姫さんは悪くないですよ。香織さんもきっと分かってますよ。」



窓の外を見ると、たくさんのネオンが次々に過ぎていく。


平日の帰宅ラッシュ。


沢山のサラリーマンが鞄片手に駅へと吸い込まれていく。



「今日は少し気分転換にドライブしましょうか?」



「え?」



島根が寄り道を提案するのは始めての事だ。



「嫌ですか?」



恐らく、香織を気にしている事への気遣いなのだろう。



「そうですね。ちょっと寄り道しましょうか?」


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