学園マーメイド
Breath...10


Breath...10



重い。
全身に圧し掛かる感情が重い。
私は変わってしまった。もちろん、悪い意味ではない。
でも、こんなにも心臓辺りが痛いと感じるのは感情の所為だと言う事は分かる。
重い、そして痛い。


「……そっか、そうだったんだ」
「あんたなんて……、あんたなんてっ!」


もし感情がなく(中学の頃の自分なら)こんな事があっても平気でいられたんだろう。
夢であって欲しいなどと世迷言を思わなかったんだろう。
気付かなかった嵐は、いつの間にか包囲を抱き込んで、逃げられないようになっていた。




月日は流れ、秋が深まりつつある9月の後半。
何故か少しずつ、嫌がらせの回数が減ってきたように思えた。
まず靴がちゃんと下駄箱にある(毎回外に出されているか、ゴミ箱の中か)。
そして下駄箱の中にゴミが一つもない。


「……なんで?」


小さく呟いて首を傾げても分からない。
彼女達が面倒くさいと思い始めているからなのか、それとも飽きたのか。
どうだとしてもありがたい。
慣れはしたものの、やはり何事もないほうが良いに決まっている。


「蒼乃、教室行くよ」
「あ、うん」


朝は相変わらず陸嵩との登校は健在。
それに加え、昼は雪兎、夜は梅沢とグレードアップした(どこがグレードかは分からないが)。
光は光で、バスケ部の女子との交流を深めているとやらで、食べようと誘ってもハートマークだらけのメールで“バンビ君と楽しんでおいで”と送られてきた。
光も例の先輩と上手くやっているのだろうか、最近はお互い忙しく部屋を訪ねていない。


「最近朝練してないね?」


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