学園マーメイド


「分かった!じゃあ、はっきり言うよ」


陸嵩の目が真剣になる。


「俺が蒼乃を心配して、俺が蒼乃の傍にいたいの。だからこうして部屋に来た。今日一日だけでいいから、一緒にいさせてよ」


いつもだ、陸嵩の真剣な思いは胸につっかえることなく体に浸透する。
今この瞬間だってそう。
澄んだ黒色の瞳が、誰も気付くはずのない小さな溝まで見つけて包み込んでくれる。
私はこの瞳を知っている。
とても暖かく心地よい色。


「…分かった」
「ちゃんと相部屋のやつには断り入れといたからダイジョーブ」
「え、まさか正直にここに行くって言ったの?」
「うん」


どこまでこの男の脳みそは腐っているのだ。
相部屋の人を気の毒に思うよ。
唖然として彼の顔を見つめていると、彼はへらへらと笑って平気だと言った。


「話の分かる奴だし。それに蒼乃の事……、っとこれは言っちゃいけなかったな」


語尾をもごもごと濁らせ、立ち上がるとそのまま今まで私が寝ていたベッドへと一直線。
そしてまだ唖然として見ている自分。
彼が気持ちよさそうにごろんと寝返りを打つのを見て我に返る。


「ちょ、待って待て!上、あんたは上で寝るの」


焦りながら指を差して二段ベッドの上を指す。


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