不器用なシンデレラ
　一体今日だけで何十回溜め息ついてるんだろう。

　食欲なんてない。

　料理を楽しむ気分じゃない。

「花音ちゃんは何頼む？」

　本田さんは、そんな私の心中ぐらい読めそうなのに明るく聞いてくる。

「・・・まだ続けるんですか？もう・・・！」

　もう山下でいいんですと言おうとした言葉は、驚きと共に消えた。

　横にいた本田さんが正面からつかつかと大きな靴音をさせて近づいてきた女性にいきなり水をかけられたのだ。

　その女性は・・・・。

「長谷部さん・・・・」

　思わず手を口に当てる。

「あんた最低！部下に手を出してどうするのよ！」　

　長谷部さんが凄い形相で睨んでる。

　でも、そんな彼女を見ても本田さんは余裕があるというかいつもと同じで焦る様子はない。
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