不器用なシンデレラ
「恐縮です。では、お薦めの新機種のご説明を・・・・」

 商品説明は10分もかからなかった。

 会長が最新機種の契約を早々に決めたからだ。

 まあ、経営者はこうでないとな。

 本田さんと共に笑顔でA社を後にし、駅に向かおうとして携帯ショップの前を通りはたと思いつく。

 そうだ、花音の携帯。

 もうあれは使えない。

 連絡がまた取れなくなれば、俺の気がおかしくなりそうだ。

「本田さん、すみません。寄るとこがあるので」

 本田さんはちらりと携帯ショップを見てニヤニヤ笑った。

「ああ、もしかして山下さんのか。お前って、ホント惚れた相手には過保護になるな。保護者みたい。見てて面白いよ」 

「他の奴にはやれませんから」

「先週とは言ってることが違うじゃん。どういう心境の変化?」

「自分の気持ちに嘘はつかないことにしたんですよ。人のことより、本田さんはどうなんですか?長谷部さんと」
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