不器用なシンデレラ
「もちろんよ。花音ちゃんは大事な娘になるんだもの。花音ちゃんがいれば我が家の食卓に和食が並ぶでしょう。一緒にケーキも作れるし、お買い物にも行けるし。ああ~、早くお嫁に来て~」

「・・・・」

 お袋の妄想に頭痛がする。

 こうなると放置するしかない。

「和食いいねえ」

 親父が笑ってお袋に同意する。

 まさか、この狸親父、和食が食べたくて花音を入社させたんじゃないだろうな。

 俺がギロリと親父を睨み付けると、親父は素知らぬ顔で鼻歌を歌い始めた。

「・・・・」

 限りなく怪しい。

 まあ、両親は花音を可愛がってるし、反対されるよりはいいか。

 廊下で足音がしたのか、お袋が俺に小声で言う。

「理人、花音ちゃんが来るわ。書類しまいなさい」

お袋の声で慌てて婚姻届を胸ポケットにしまうと、俺は小声で礼を言った。
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