不器用なシンデレラ
 私は祖母の苦労なんて何も知らなかった。

 知ろうともしなかった。

 私大に通うには年間100万以上の授業料がかかる。

 父の保険金は全て母が持って行ってしまったし、よくよく考えればうちには私大に行く余裕なんてなかった。

 奨学金をもらって、バイトで少し稼いでも100万には程遠い。

 それを承知で祖母は大学に行かせてくれた。

 私の夢のために。

 私が何故神様に見放されているのかわかる気がする。

 知らないってのは罪だ。

 何も考えず、何も知ろうとしなかった私は大事な人の人生までも変えてしまっている。

 そんな私に生きる価値はあるのだろうか。

 考えれば考える程深い闇に捕らわれ身動き出来なくなる。

「私もおばあちゃんと一緒に煙になって逝きたかったな」

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