SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~


「…亜澄、さん。」


―――――――。


ふっと上がった口角とは逆に、目尻は下がっていく。

その表情があんまり優しくって、私は思わず固まってしまう。


「亜澄、さん。」


何でだろ…。

胸が、きゅーっと締め付けられた感じがする。


「せーんせっ。」


「…っ。」


息を吸い込んだまま、視線も逸らせず、八木君の瞳に囚われたまま動けない。


「先生って呼ぶよりも、――――。

俺だって、亜澄さんって呼びたいよ?」


差し出された指先は、すーっと私の頬に触れていく。

声も出せなかった。

八木君の、一連の動作に目を奪われて。

私は黙ったまま、されるがままになっていた。


「呼べるもんならね、呼びたいよ…。」


「…っ!!」


「やわらか…。」


指先が、ゆっくりとした動きで唇をなぞっていく。

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