SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~
「っで、――――?
足、突っ込んだまま、自転車ごと倒れたの?」
「うん…。」
昨夜の話を聞かせながら、澄玲の淹れてくれたコーヒーを飲む。
「でも、良かったねーっ。
塾の人、いてくれて。」
――――――。
何となく、後ろめたくて、――――。
八木君…、生徒だとは言えなかった。
体温計で熱を測ると、38度を超えていた。
数値を見た瞬間、グラリと倒れそうになった私を、八木君は可笑しそうに笑って。
「自分で気付かなかったの?」
確かに、熱いとは感じてたけど…。
まさか、君のせいだと思ってた、なんて言えるわけないじゃない。
結局、私は八木君に頼るしかなくって。
いとも簡単に抱え上げられた身体は、ベッドルームへと運ばれた。
冷たい枕も、解熱の薬も、全部用意してくれて。
明け方、――――。
八木君は自宅に帰って行った。
「あとは、葛西が来てくれるっしょ?」
そう、ひと言、言い残して。