SWEET PAIN ~ 死んじゃった人には絶対に敵わない ~


「葛西先生の授業は僕が受け持つからさ。

僕が抱えていた資料なんかをまとめてほしいんだ。

あの、保護者に配る実績とかのやつ。」


「ああ、あれですか。」


「そうそう。もうほとんどまとめてはあるから、残っているデータの入力と出力、お願いできるかな。」


「はい、大丈夫です。」


「裕木先生なら、そんなに時間がかからないだろうし、帰りは送っていくよ?」


「いえ、私は自転車なので大丈夫です。」


「そうか、それじゃあ、頼むよ。」



うんうんと頷きながら、塾長は煙草を灰皿に押し当てた。



「じゃあ、葛西先生、お気をつけて。」


「すみません、塾長。

急にお願いしてしまって。」


「ああ、それなら裕木先生に言ってください。

花の金曜日に残業を引き受けてくれたのは、裕木先生ですからね。」


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