おててがくりーむぱん2


アパートに転がり込むと、鞄から携帯を取り出した。孝志へ電話をする。


孝志。
出て、お願い。


光恵は両手で携帯を持ち祈ったが、耳から彼の声は聞こえない。呼び出し音が鳴るばかりだ。


どうして、出ないの?
仕事?
まさかまだこのことに気づいてない?
心配してわたしに電話をかけてきてもいいのに。


留守番電話サービスに「折り返し下さい」とメッセージを残した。


でも不安でたまらない。
彼は電話をかけてこないんじゃないだろうか。
明日から、どうしたらいいの?


光恵は携帯を握りしめたまま、ベッドの上に転がった。


どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。


混乱した頭の中には、今日見たネット写真がちらつく。孝志との優しく甘い時間が、汚されてしまったような気がした。みんなに見られた。わたしたちの、愛の行為を。


綿毛布の冷たさがブラウスを通して光恵の身体に染みてくる。
徐々にパニックから覚醒していく。
しばらくじっとしていると、理性的な思考が戻ってくるのがわかった。


壁掛け時計の音と、柔軟剤の香り。
大丈夫、わたしは今、自分の部屋にいるのだから。


光恵はゆっくりと起き上がり、スマホのブラウザを起動させる。
そして「佐田孝志」で検索をかけた。

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