おててがくりーむぱん2


「馬鹿も休み休みいいなさい」
志賀が眼鏡をとって、眉間をぎゅーっとつまんだ。


「今、彼女の周りはとんでもないことになってるわ。名前もばれたんだもの。そこにノコノコあなたが出て行って、どうするつもり。ちっとも沈静化しないじゃない」


孝志は変な汗をかいて来た。
想像していたよりもずっと、大変なことになってる。


「携帯を出して。しばらく預かります」
「でも……」
「事務所が全部対応します。あなたはじっとしていて」
「……」
「来週はじめに、キャノルの製品発表会イベントに出席予定よね。まだキャノルから中止って来てないから大丈夫だと思うけど、それまでの仕事は全部キャンセル。ホテルを用意するから、そこから一歩も出ないこと。いいわね?」
「それは……」


「どれだけ周りに迷惑かけてると思ってるの? 黙って指示に従いなさい」
志賀の鋭い声が響く。


「彼女に……」
孝志は必死に言う。


「彼女に『心配しないで、大丈夫だ』って、伝えてください」


志賀からその返事はもらえなかった。手で追い払うような仕草をした後、椅子をくるりと回して孝志に背を向ける。


孝志はがっくりとうなだれ、黙って引き下がった。


< 109 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop